高濃度ビタミンC点滴

皆さま、こんにちは。

万緑の時期になってきました。コロナ感染症も小康状態となり、すこし気分が明るくなってきた方も多いのかと思います。

当院では2009年から、地道に高濃度ビタミンC点滴療法を行っております。ビタミンCは皆さまご存知の通り、生きるために必要な化合物であり、酸化した物質を元に戻す強力な還元力(これが強力な抗酸化力といわれる由縁です)をもちます。またビタミンCは、結合タンパクとしてのコラーゲンの生成に必要なもので、ビタミンCが不足するとコラーゲンが合成されず、血管が脆くなり出血を起こします。これが壊血病です。その他にも、小腸において鉄の吸収を促進、ビタミンEの再生への関与やコレステロール等の資質の代謝やアドレナリンの合成に必要な酵素の働きを助ける補因子の働きもあります。皮膚のメラニン色素の生成を抑え、日焼けを防ぐ作用、ストレスやかぜに対する抵抗力を高める働きなど様々な働きがあるとされます。

人は100万年前に、肝臓においてL-グロノラクトンオキシターゼという酵素がなくなり、体内でビタミンCを合成する能力を失なったとされています。その為、体外からビタミンCを摂取する必要があります。日本人においては、成人では1日の推奨量が100㎎(2020年版食事摂取基準)と設定されています。2019年の国民健康・栄養調査によると、日本人のビタミンCの平均摂取量は93.5㎎とされ、摂取量別に見ると最も多いのは野菜類から、次に果物類、嗜好飲料類、いも類の順に摂取されています。

一方当院で行っている高濃度ビタミンC点滴療法は、癌の治療として欧米を中心に行われています。高濃度ビタミンC点滴療法は、さかのぼれば1940年代頃から研究が始まりました。1976年に末期がん患者に対し、米国のLinus Paulingが英国のEwan Cameromと共に、ビタミンC 1日10g点滴投与を10日間、以降10gの長期経口投与を行うことで比較対象群の4.2倍の延命が得られたと報告しました。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC336151/)。1979年になり、米国の医療機関であるMayo ClinicからビタミンCの大量投与は進行がんに対し有効な効果はないとの論文(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3880867/)が出されました。この研究は点滴での投与はなされず、60日間のビタミンC10g経口投与のみで無効との判断がなされておりPaulingらが行った報告とは条件が異なっていたため、その結果を疑問視する声もあったものの、発表されたのが著名な医療機関であった故にその後、世界的に高濃度ビタミンC療法はほとんど行われなくなってしまいました。しかしながら、その後2000年以降アメリカ国立衛生研究所、アメリカ国立がん研究所などの論文(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15068981/)(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16157892/)を皮切りに、その有効性は見直されています。

高濃度ビタミンC点滴の投与法としては、まず初めに既往歴や合併症などを確認し適応となるか判断します。その後にG6PD欠損症の有無の検査を行い問題のない事を確認したのちに、慎重に少ない量(12.5g)から投与開始、有効血中濃度まで随時点滴濃度を上げていきます。最大量は100gまで投与可能ですが、大抵の患者様は50~75gの間で有効血中濃度が得られています。有効血中濃度に達したのち、週1~2回程度の投与を継続します。採血やCTなどのデーターや前述の血中濃度を参考にしながら、状況に応じ投与量を調整します。高濃度ビタミンC点滴療法を併用しながら化学療法や放射線療法、がん腫によりホルモン療法と併用する方も多くおられ、主治医の先生から経過良好で治療終了と伝えられた方と、喜びを分かち合っています。また当院では、この度の院内の改装を機に完全個室で、高性能空気清浄機を完備した快適な点滴室を造設したので、安心して点滴治療ができるかと思います。

がんにおける高濃度ビタミンC点滴をされて、副次的に肌が綺麗になった(実際、当院の患者様にも実感される方がおられますが、、、)とのうわさを聞きつけ、美容目的に濃度の高いビタミンC点滴をご希望される方もいらっしゃいます。ビタミンCは、肝斑などの治療にも使用されるため、確かに理論的にはあり得ることと捉えています。既往歴など確認し問題が無ければ、当院での高濃度ビタミンC点滴をご希望される方にも対応はいたします。

高濃度ビタミンC点滴をご希望の方は、お気軽にたじま医院受付(03-3971-0388)にご連絡ください。真剣にご対応いたします。