新しい片頭痛治療薬レイボーについて
皆さま、こんばんは。
片頭痛という病気を耳にされたことはありますでしょうか。現在の日本で約840万人の方が苦しんでいる頭痛です。女性の罹患率が男性に比べ約4倍近くあります。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9051330/)激しい頭痛でいつ発作が起こるかわからず、不安な気持ちを抱えたまま生活される方も多くおられます。日常生活にかなりの支障が出るにも関わらず、たかが片頭痛と周囲には理解されず、悩まれる事が多い現状があります。
まず片頭痛とは
頭の片側もしくは両側のこめかみ付近に、脈打つような痛みが繰り返し生じ、日常生活や仕事に支障をきたする激しい頭痛です。症状として特徴的な点は、突然頭痛がはじまり、30分から1時間でピークに達するということです。症状はおおよそ4~72時間程度で消失し、症状が消えると普段と変わりなく過ごせます。症状を起こす頻度は、週に数回の方もおられれば2~3ヶ月に1度の方もおり、頻度に幅があります。また、普段は気にならない光や音に対して過敏になるといった随伴症状がみられることもあります。片頭痛のメカニズムはまだ確定しておらず、神経説や血管説、三叉神経血管説などの検討、研究が今もされています。ただ、経験的に精神的ストレス、または強いストレスから開放された時、寝すぎもしくは寝不足、悪天候前などに症状が生じやすいとされています。また、ホルモンのバランスが症状を起こすきっかけとなる事の指摘もあり、月経周期に伴い症状がでる方もおられます。
片頭痛発作は、予兆期・前兆期・頭痛期・回復期のように時間経過をたどります。
予兆とは、”頭痛がくるかも…” という漠然とした予感の事で様々な感じ方があります。具体的にはあくび、肩や首のこり、むくみ、疲労感、食欲亢進や過食、抑うつ感など多岐にわたります。前兆について有名なものは”閃輝暗点(せんきあんてん)”とよばれる症状です。具体的には、目の前で光がチカチカする、視野の一部が欠ける、歯車のようなギザギザしたものが見える、などがあります。それ以外の前兆としては、手足のしびれやめまいなどがあります。ただ頻度としては、上記の突然の発症の方が多いとされます。
治療薬としては、大きく分けて①頭痛の予防薬、②予感を感じた際の薬、③鎮痛剤の3種類があります。
①予防薬(ミグシス、インデラル、クリアミン、デパケン等)→これらの薬剤は、もともと他の疾患用に開発、使用されていたもので片頭痛予防効果があることがわかり使用されています。副作用に関するデータも豊富であり、比較的安全に使われています。
②予感を感じた際の内服薬(イミグラン、ゾーミッグ、マクサルト、アマージ、レルパックス等)→片頭痛治療薬で最も使用されている”トリプタン系”です。予感を感じた際に内服することで、その後に生じる片頭痛を軽減させる働きがあります。トリプタン系は、片頭痛の前兆が捉えることができれば、頭痛前に使用することで高い効果を示すことがわかっています。しかしながら、起床時にいきなり片頭痛であったり、前兆がはっきりしない場合には十分な効果を発揮することができません。また、内服による副作用として眠気・倦怠感が胸の苦しさが出る方には内服が難しい事、血管を収縮させる働きがあるために狭心症や心筋障害、脳梗塞の方には使用が出来ません。
③鎮痛剤(ロキソニン、ブルフェン、ボルタレン、カロナール等)
その他に当院では、頭痛の診療ガイドラインにも有効と記載されている漢方薬の対応もしています。その方の証に合わせて呉茱萸湯(ゴシュユトウ)、釣藤散(チョウトウサン)、桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)などを使用します。
ここからが(短いですが…)本題です。2022年6月8日に新しい片頭痛薬が発売されました。新しい薬はジタン系(製品名レイボー)と呼ばれるもので、上記のトリプタン系と使用法は似ています。違いは、片頭痛の痛みが出てからでも十分に効果を発揮すること、血管収縮作用がないので心血管障害の方にも使用できる点が挙げられます。またトリプタン系では効果不十分の方にも有効性が認められており、日本においてはトリプタン系とほぼ同じコストで内服が出来るのも大きなメリットといえます。最近、若い方の片頭痛患者さんが増えてきている事を考えると、このコストの問題も大事なポイントと思います。また治療に際しては、ご自身で頭痛の状態を客観的にみる事も大事なポイントです。この際に役立つのは頭痛の記録です。頭痛ダイアリー(https://www.jhsnet.net/dr_medical_diary.html)を付けられると診断、治療に役立ちます。
様々な方法で片頭痛が改善され、どのような方も快適な生活が送れるよう頑張って治療していきます!