婦人科領域の感染症について

皆さまこんにちは。本日は婦人科感染症についてお話し致します

婦人科感染症は、女性の生殖器で感染を引き起こす病気の総称です。これらの感染症は、体調によって生じるものもあれば、性交渉によって感染するものもあります。主な感染症の種類と治療方法には下記のようなものがあります。

1. 淋病

淋病は、淋菌が主に尿道や子宮頸管などの粘膜を侵すことが原因になります。症状にはおりものの異常などがありますが、自覚症状がない場合も多くあります。淋病の治療には、抗生剤のアジスロマイシンなどの経口投与を行います。

2. 梅毒

梅毒は、細菌によって引き起こされる性感染症です。初期症状は、発疹や潰瘍などがありますが、放置すると内臓や神経系にも影響を及ぼす可能性があります。梅毒の治療は、ペニシリン系抗生物質の投与が基本になります。アレルギーのある患者にはドキシサイクリンまたはアジスロマイシンが代替として使用されることもあります。

3. B型肝炎(ヒト型肝炎ウイルスによる感染)

B型肝炎は、ヒト型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされるウイルス感染症です。感染初期には疲労感や腹痛などの症状が現れることがあります。症状が進行すると慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんの原因となります。B型肝炎の治療には、抗ウイルス薬やインターフェロンなどが使用されます。

4. トリコモナス

トリコモナスは、トリコモナス・ヴァギナリスという原虫によって引き起こされる感染症です。黄色のおりものや異臭、外陰部のかゆみなどが症状として現れることが多く、不正出血などが症状として現れることもあります。治療法は抗原虫薬の入った経腟剤を使用します。

5. 細菌性膣炎

細菌性膣炎は、大腸菌などの細菌感染に伴い引き起こされる感染症です。白~黄色のおりものが生じることがあり、異臭も生じます。治療は抗生剤の入った経腟剤を使用します。

6. カンジダ

カンジダは健康な人の肌にもいるカビの1種ですが、体力や免疫力の低下などがあると増殖し酒粕のような白色でボロボロするようなおりものや外陰部の痒み、ときに排尿時の痛みがでるかたもいらっしゃいます。治療は抗真菌剤であるクロトリマゾール、フルコナゾール、ミコナゾールなどの経腟剤や塗り薬を使用します。

7.ヘルペスウィルス

単純 ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって引き起こされる感染症です。一度感染すると神経節に潜伏、免疫力の低下ともない再度活性化し、再発を経験することがあります。症状は外陰部の不快感、掻痒感、灼熱感、水泡を伴った皮疹、潰瘍が特徴です。治療は抗ウィルス薬のアシクロビルを内服します。

8.クラミジア

クラミジア・トラコマチスという細菌の1種が原因で起こる主に感染症で、性交や性交類似行為による粘膜や分泌物との接触により感染します。女性の場合、さらさらした漿液性のおりものや腹痛で発症することもあります。症状が進むと卵巣や骨盤内の臓器、肝臓周囲に炎症がおこり、不妊症の原因になる事でも有名です。治療はテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、およびニューキノロン系抗生剤の投与を行います。

9.ヒトパピローマウイルス

ヒトパピローマウイルス(HPV)によるウイルス感染症で、尖圭コンジローマや子宮頸がんの原因として知られていますが、肛門がんや膣がん、咽頭がんの原因にもなります。性交や性交類似行為により皮膚粘膜部分の接触により感染します。通常は感染後、数ヶ月以内に自然に治癒し、2年以内で約90%が治ります。HPVには多くの型があり、尖圭コンジローマを生じる型はカリフラワー状の腫瘤をつくります。このタイプはレーザー治療や塗り薬で治療を行う事が可能です。一方で同じパピローマウイルスでも一部の毒性の強い型に感染した場合、少数の人が持続感染し、がんへと進行することが知られています。こちらは感染に対する治療薬はなくワクチンによる予防があります。

婦人科感染症の治療には、正確な診断と適切な処方が必要です。自己診断や自己治療は避けたほうが良い場合が多いといえます。また、定期的な検診や予防策の実施が大事です。少しでも気になる事や症状が現れた場合、思い当たる節がある場合はいつでもお気軽にお問い合わせくださいね。