帯状疱疹と帯状疱疹の予防ワクチン

帯状疱疹という病気をご存知でしょうか。

”胸に赤い水ぶくれができる” ”痛みが出てつらいですよね” ”皮疹が治った後、いつまでも痛みだけが残っている人を知っています” など体験された方やお話をお聞きになった方も多いと思います。最近、外来で帯状疱疹を発症し受診される方が増えています。

そもそも、帯状疱疹の原因は ”水痘・帯状疱疹ウイルス” というウィルスが原因です。

水痘とは水ぼうそうのことでこの病気は、皆さんお子さんの時に罹ったことがある方も多いと思います。水ぼうそうの際に体内に入り込んだウィルスは症状が治った後も、一部の神経の奥に潜むとされています。その後、ストレスが増したり、年齢を重ねたり(80歳までに3人に1人が罹患するとされています。/https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2256-related-articles/related-articles-404/4014-dj4048.html)免疫力が低下したりすると神経をつたい表面に出てきます。この出てきたものが帯状疱疹といわれる病気です。つまり帯状疱疹の原因は、水ぼうそうのウィルスと同じというわけです。

さて、帯状疱疹に罹った際には、抗ウィルス薬を内服して頂き治療を開始します。このお薬は発疹が出た後72時間以内(できれば24時間以内がよいとされています。)に内服開始し7日間内服します。ただし、発疹出現したのち5日以降であっても、発疹が出続けているようであれば内服はした方が良いとされています。(国立感染症研究所HP https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2433-related-articles/related-articles-462/8238-462r10.html

人によりけりではあるものの治療後にも、色々と合併症や後遺症があります。その中でも困る事で多いのが ”治った後に、痛みが長期間持続する” ことです。この痛みのことを ”帯状疱疹後神経痛”といいます。罹患後、おおよそ10-50%の方に出てくるとされています。この神経痛の感じ方は、人によりさまざまですが ”下着が擦れて痛く着られない” ”就寝時も痛く、寝返りがうてない” など、生活に支障が出る事も多々あります。そのため、痛み止めの内服等で対応しますが、ひどくなると効かないため、痛みの専門医であるペインクリニックに通院され、痛みを止めるため麻酔の注射を定期的に打たれている方もいます。

つまり、なれば発症したくない、予防が出来ればしたいですよね。基本は普段から身体を動かし、夜更かしせず、栄養のあるものを食べ、良く寝る。というような聖人君子のような生活が望ましいとは思いますが、なかなか現代の世で生活をしていると難しいです。(私は…絶対無理です。笑)

そこで、2016年から(自費にはなりますが)ワクチン接種により、ある程度の予防ができるようになりました。

接種できるワクチンは2種類あります。一つは ” 乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビゲン)” です。これは生ワクチンと言われ、弱毒化された生きたウイルスが含まれています。小児に使用する水痘ワクチンと同じものですが、その効果は帯状疱疹の発症を51.3%減らし、帯状疱疹後神経痛の発症を66.5%減らします。(https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2433-related-articles/related-articles-462/8236-462r08.html)また、予防効果は大体5年程度(https://academic.oup.com/cid/article/55/10/1320/321462)と考えて良いようですが、個人差も大きいとの報告もあります。(Cook SJ, et al., Clin Ther 37: 2388-2397, 2015

接種は一回で済みます。副反応として一般的な接種の副反応以外に特異的な副反応として、接種後1-3週間後に発熱や、3-5%に全身性の水痘様発疹がみられることがあります。そして、ここが大事なところですが接種に際し、以下の条件があります。①50歳以上の方 ②免疫が低下する病気に罹っていないこと(エイズや白血病に罹っていない事)③免疫を抑制する治療をしていないこと(免疫抑制剤、抗がん剤を使用していない事)④妊娠していないこと ⑤カナマイシン、エリスロマイシンの抗生剤にアレルギー反応のない方 。

もう一種類は、”シングリックス®” です。このワクチンは2020年1月から使用ができるようになりました。帯状疱疹を予防するために開発されたワクチンで、ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンという種類になります。シングリックス®は上記の生ワクチンに比べて帯状疱疹を予防する効果が高いとされ、50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%の発症予防効果が認められています。(Cunningham AL. et al.: N Engl J Med. 375(11), 1019-1032, 2016)また、発症予防効果が少なくとも9年間たっても認められているのが特徴です(Schwarz TF. et al.: Hum Vaccin Immunother. 14(6), 1370-1377, 2018

こちらのワクチンの接種は2回必要です。1回目の接種後、2ヶ月あけて2回目を接種します。(万が一、2ヶ月を超えてしまった場合には、半年以内に2回目を行います)また副反応ですが、8割の方が接種部位に痛みや発赤が出現する事がわかっており、その他に全身の筋肉痛や、倦怠感、頭痛などがみられることがあります。
接種において、こちらのワクチンは強いアレルギー症状を起こしたことがある方以外は禁忌はありません。

まとめると、

乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビゲン)シングリックス®
接種回数1回2回(2か月後に2回目)
予防効果約50%約90%
持続期間5年程度(3年-11年)9年程度
副反応接種部位の痛み、腫れ。 特異的反応として、    接種後1-3週間後に発熱や全身性の水痘様発疹
する事がある。
約8割に接種部位に痛みや発赤が出現。その他に、全身の筋肉痛、倦怠感、頭痛が出る事がある。
料金8,000円(税別)20,000円(1回/税別)
(2回接種するため総額は40,000円になります)
メリット1回の接種で済む。 値段が安い。
(一部の地方自治体は助成有)
予防効果が高い。 持続期間が長い。
デメリット条件があり接種できない方がいる。2回接種しなくてはならない。 値段が高い。

どちらがよいかは難しいところかと思います。一度つらい思いをされた方は、より予防効果の高いシングリックス®を選択されるでしょう。ただ、接種条件が合いコストを考えるならばビゲンの生ワクチンでもよいのかな、とも思います。

乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビゲン)は常備されておりますが、シングリックス®は予約が必要になります。接種ご希望の方は当院受付にご連絡(03-3971-0388)下さい。